euvicc's sphere cycloalkanique

自転車とMETALとその他雑多な物欲記録。そして大病から生還し生き残り続ける奇跡の徒然など。

何故か四十手前にして自転車趣味に目覚めてしまったある男の記録...のようなもの。

ライドの記録、買い物記録、超私的レビューみたいな駄文を書き連ねます。

2021/10、急性大動脈解離(Stanford-A型)から奇跡の生還。

以降は予後のこととかも書いたりすると思います。

【本】86 -エイティシックス-

Euviccです。ちょっとご無沙汰でした。



今さらか?って話がないでもないですが「そろそろいいかな」と手を出してみたのが運の尽き、あっという間に既刊すべてを読み終えてしまいました。4月からアニメ放送もスタートしたKADOKAWA電撃文庫……つまりライトノベルの『86 -エイティシックス-』です。





いや〜久々にこういうのにハマりました。第1巻作者あとがきに曰く

戦闘メカにボーイミーツガールにディストピアにその他諸々、色々ぎゅぎゅっと


詰め込んだ、いうなれば異世界の近代または近未来戦争SF小説とでもいうべきでしょうか。社会/政治的には第一次世界大戦後から第二次世界大戦までのヨーロッパ諸国に似てて、その一方でテクノロジーは現代およびそれよりちょっと(いや結構?)先という異世界。人々は肌の色だけでなく髪や瞳の色によっても種族として分けられ、物語の舞台であるサンマグノリア共和国民の大半を占める白系種(アルバ)や、それ以外に黒系種(アクィラ)金系種(アウラータ)青系種(エルレ)赤系種(ルベラ)などなど──これらはひっくるめて有色種(コロラータ)と呼ばれる──、多様な種族が存在するということになっている世界で。



隣国ギアーデ帝国の完全自律無人戦闘機械〈レギオン〉に、立ち向かうサンマグノリア共和国軍は自国で開発した無人戦闘機械"ジャガーノート"で絶望的な抵抗を続けているが、無人ゆえに戦死者は常にゼロ(丶丶丶丶丶丶丶丶)。国土を囲む巨大な防壁の内側に戦火は届かず、人々は物資の慢性的な不足はともかく平和で安楽な日常を過ごしている──だがその実態は。



ジャガーノート無人でもなんでもなかった。人種差別政策によって「人」であることを否定され、85に区分された共和国の行政エリアの外に隔離された有色種(コロラータ)たち。人のかたちをした豚とされた彼らは85区のさらに外=すなわち86区に住む者たち: "エイティシックス"と呼び蔑まれるのみならず、武装/装甲ともに脆弱の極みであるこのジャガーノート情報処理装置(プロセッサー)として乗せられ〈レギオン〉との戦闘を強制されていた。既に大人たちのほとんどは戦死し、今では10代の子供たちまでもが戦わされ命を落としていく。しかし、共和国政府に言わせれば「エイティシックスは人ではない。人ではないのでジャガーノート無人機だし、つまり戦死者はゼロである」という狂気の理屈。吐き気がするほどのディストピア……いや寧ろ地獄です。



光線兵器(ビーム)もなく、その特異な作品設定ゆえ航空兵器の運用がほとんどできず、同様に誘導兵器(ミサイル)も使い物にならない……そんな戦場の主役は多脚戦車、武器は実弾。共和国の"ジャガーノート"はとびっきり脆弱で一発当たれば即撃破≒戦死という()装甲、実際プロセッサーたち──年端もゆかぬ少年/少女兵は次々と敵弾に斃れていく。そんな中、一人の卓越した戦闘能力を持つ少年兵士がいた。どんな激戦でも必ず独り最後まで生き残る彼には"葬儀屋(アンダーテイカ)"なるふたつ名(パーソナルネーム)がつけられている。そんな主人公シンエイ・ノウゼン(通称シン)が率いる精鋭"スピアヘッド戦隊"こと東部戦線第一戦区第一防衛戦隊に、ある日着任した新任の指揮管制官(ハンドラー)。弱冠16歳ながら少佐にまで昇進している超エリートの少女ヴラディレーナ・ミリーゼ。物語はここから始まっていきます。



戦時中の人種差別政策といえば、現実世界の歴史で最初に思い浮かぶのはナチス・ドイツによるユダヤ人迫害。加えて「敵性国民」を隔離しそれのみで構成された部隊といえば、やはり第二次大戦/大東亜戦争(太平洋戦争)中のこのあたりでしょうか。





そもそもの世界設定が欧州っぽい(といってもなんとなく似てるかな?程度)ので、登場する国家/地域にもなんとなくそんなニュアンスがあるように思えます。たとえばサンマグノリア共和国は革命で共和制になってからのフランス? 東の隣国ギアーデはやはり帝政ドイツ、または(2巻以降の話ですが)その後のヴァイマル共和国か、第二次対戦後分断されたドイツの西半分かな? さらに巻を進めると出てくるロア=グレキア連合王国は、その名前から想像できるイギリスより人名や気候から考えると帝政ロシアの方が近いような? そのあたりは厳密に考える必要もなくて架空世界の味付けとして楽しめば良いかな、と。



メカの描写もなかなかステキです。メカデザやキャラデザがしっかり入っていて情景の脳内描写を助ける(その代わりイメージの固定によって読者の自由な想像を妨げる)のがライトノベルの定義のひとつらしいですが、メカニックデザイン担当のI-Ⅳ氏による主人公シンたちの乗機"ジャガーノート"がこれまたカッコいい。パラメータを機動力に全振り、装甲や居住性の考慮がほぼ皆無な上に武装も貧弱(57mm滑腔砲)という棺桶っぷりが全面的に表現された、歪で不恰好な機能美。言ってしまえば浪漫(丶丶)の極みです。アツい。そして、随伴する補給用無人スカベンジャー(屍肉漁り)がこれまたカッコいい。カッコいいどころか寧ろカワイイ(((o(^∇^)o))) ファイドかわいいよファイド。



そんな当作品『86 -エイティシックス-』現在短編集のEp.10を含め合計10巻まで刊行されています。


原作小説からでも、アニメから入ってもどっちでも良いと思います。あーでも、原作から入るなら第1巻を読了した時点で一度アニメ観といた方がいいかもですね。アニメの出来、個人的にはかなり良いと思っています。2021年春アニメの最高峰じゃないだろうか?🤔



いよいよクライマックスに入ろうとする原作も、間もなく第1クール終盤に入るはずのアニメも、今後が楽しみでなりません。



……といったところで、今日はこの辺で。私はこれから原作読み返し3回目に入ろうと思います。では、おやすみなさい👋